膜蛋白質のシェディングとその制御機構を探る
編集　瀬原淳子

特集にあたって
ADAMプロテアーゼによるシェディングの謎
瀬原淳子

HB-EGFにおけるシェディングの役割とその制御
岩本　亮

シェディングとは，膜蛋白質が細胞表面で切断をうけその一部が細胞外へと放出される過程をさす．シェディングにより切り出されたHB-EGFは増殖因子として機能するようになるが，HB-EGFの遺伝子改変マウスの解析からその重要性が明らかになってきた．

シェディングの中心的な酵素TACEの多彩な機能
堀内圭輔

TACEはTNFαをその膜型前駆体から切り出す切断酵素として同定されたが，さまざまな膜蛋白質のシェディングにかかわることが明らかとなった．また，TACE遺伝子改変マウスの表現型の解析から，生体の恒常性維持におけるシェディングの役割がわかってきた．

神経系の細胞間シグナル伝達におけるメルトリンβの多面的な役割
若月修二･湯本法弘･瀬原淳子

メタロプロテアーゼのひとつメルトリンβは膜型グリア増殖因子ニューレグリンのシェディングに関与し，神経と筋シナプス，あるいは，神経とシュワン細胞など異なる細胞間のシグナル伝達を制御することにより，神経系の発生・分化にかかわっている．

DSLリガンドのシェディングによるNotchシグナルの制御と整流
高橋智聡･村口輝行･竹上雄治郎･三木貴雄

Notchシグナル経路は細胞の増殖や発生・分化において重要で，Notchとそのリガンドが結合することにより起動する．ADAMファミリー蛋白質はNotchの主要なリガンドであるDSLリガンドのシェディングを行なうことにより，その制御を行なっていた．

γセクレターゼによる膜内配列の切断を介したバイオロジーと疾患
富田泰輔

γセクレターゼは疎水性環境である膜貫通領域においてペプチド結合を加水分解するプロテアーゼである．γセクレターゼにより産生されるアミロイドβ蛋白質はアルツハイマー病の発症に深くかかわるため，これを標的とした薬剤の開発が進められている．

ADAMファミリー蛋白質の立体構造と作用機構
武田壮一

ADAMファミリー蛋白質はさまざまな膜蛋白質のシェディングに関与するが，その基質認識機構は不明であった．蛇毒ADAMファミリーホモログ蛋白質のX線結晶構造解析からドメイン構造が明らかとなり，新たな基質認識機構が示唆された．

エクトドメインシェディング　膜型増殖因子　ADAMプロテアーゼ　セクレターゼ

ようこそバイオベンチャーへ
森下竜一

ギャップ結合チャネルの構造とそのはたらき
前田将司

ギャップ結合チャネルは多細胞生物においてとなりあう細胞を連結し低分子の透過に機能している．これを結晶化し構造を3.5Å分解能で決定することで，物質の透過性に関与すると思われる表面構造やチャネルの開閉について興味深い構造が明らかとなった．

シロイヌナズナの表皮の分化と機能
田中博和･町田泰則

高等植物の表皮組織は気孔細胞や根毛細胞など特殊化した細胞を形成し，また，水分の透過性を制限するため“クチクラ”を形成する．シロイヌナズナにおいて明らかになってきた，クチクラの形成にかかわる遺伝子について概説する．

ここまできたぞ，長寿の薬

いつまでも同じとはかぎらない
筋再生における転写因子Pax7の機能

生体での現象に無駄はない
アミロイド線維の生理的な機能

がん細胞の運動と浸潤におけるEphパラドックスの解明

シアル酸転移酵素の発現が血液脳関門の通過を可能にする
乳がんの脳転移にかかわる遺伝子

有尾両生類の肢再生における芽体はヘテロな細胞集団からなっている

赤血球に寒イボをつくるマシーン
マラリア原虫でみつかった新型の分泌装置

光応答性“ケージド”電子供与体として機能するGFP

T細胞によるインフラマソームの調節

ライブからライブCLEMへ
蛍光顕微鏡法と電子顕微鏡法との融合
原口徳子

分子生物学，生化学，細胞生物学における統計のポイント
医療統計学の専門家を交えた鼎談
山中伸弥･青井貴之･佐藤俊哉