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新規ペプチド"グレリン(Ghrelin)"の発見と生理的意義
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国立循環器病センター研究所 生化学部 部長
寒川 賢治
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【要 旨】
成長ホルモン(GH)の分泌は、視床下部ホルモンであるGHRH(促進)やソマトスタチン(抑制)により調節されることが知られているが、GHS
(growth hormone secretagogue)と呼ばれるGH分泌促進活性をもつ合成化合物による第3の経路による制御の存在も示されていた。GHSはGHRH受容体とは異なる7回膜貫通型オーファン受容体であるGHS-Rを介してGH分泌を促進することから、内因性リガンドの存在が示唆され、多くのグループによりその単離が試みられていたがこれまで不明であった。
我々のグループは、GHS-Rの安定発現細胞系を確立し、細胞内Caイオン濃度の上昇活性を指標として、"グレリン(ghrelin)"と名づけた内在性リガンドをラットおよびヒト胃組織から発見・構造決定することに成功した。この新規ペプチドはアミノ酸28個からなり、3番目のセリン残基が
脂肪酸(n-オクタン酸)でアシル化修飾された特徴的な構造を有する。しかも、この脂肪酸修飾はグレリンの活性発現に必須である。消化管である胃からのグレリンの発見により、これまで全く考えられなかった新たなGH分泌調節系の存在が明らかになった。
グレリンの主要な産生部位は胃の内分泌細胞であるX/A like cellであり、胃から分泌されたグレリンはホルモンとしてGH分泌調節に関わり、さらに、エネルギー代謝系や循環器系などにおいても機能することが明らかになっている。一方、グレリンは視床下部弓状核の神経細胞にも存在し、中枢性のGH分泌調節や摂食調節に関わる。グレリンの摂食促進作用はGHを介さず、また末梢投与によっても摂食促進に働く特徴的なものである。
このように、グレリンは多彩な生理作用を有し、また、その血中濃度と疾患との関連も明らかになりつつあり、診断薬・治療薬への応用も考えられる。実際、ごく最近、重症心不全患者への慢性投与の臨床研究も実施されている。
本講演では、グレリン発見の経緯から生理作用、病態生理的意義、臨床応用の可能性などについて紹介したい。 |
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【略歴】寒川 賢治 (かんがわ けんじ)
昭和23年8月22日生(54才)
国立循環器病センター研究所生化学部部長
昭和51年
大阪大学大学院理学研究科博士課程修了 (理学博士)
昭和52年
宮崎医科大学医学部助手
(第二生化学・松尾壽之教授)
平成2年
宮崎医科大学医学部助教授(第二生化学)
平成5年
〜 国立循環器病センター研究所生化学部部長
平成8年
〜 京都大学大学院医学研究科教授(併任)
平成13年
〜 京都大学医学部探索医療センター教授(併任)
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専門分野
・生化学(脳神経ペプチド)
・内分泌学(Na利尿ペプチド・アドレノメデュリン・グレリン)
主な研究
・新規オピオイドペプチド類の発見(1978):モルヒネ様ペプチド研究への貢献
・新規微量脳神経ペプチド(ニューロメジン類)の発見(1983〜):新しい神経伝達機序研究への寄与
・ナトリウム利尿ペプチド(ANP, BNP, CNP)の発見(1984〜):新しい循環調節機構の証明
・新しい降圧ペプチド(アドレノメデュリン・PAMP)の発見(1993〜):新しい血圧調節機序解明への手掛かり
・新規成長ホルモン分泌促進ペプチド(グレリン)の発見(1999〜):成長ホルモン分泌調節の新たな機序解明への手掛かり
受賞歴
昭和54年度 朝日学術奨励金を受ける
昭和60年度 日本生化学会奨励賞受賞
昭和60年度 日本内分泌学会神経内分泌 川上賞受賞
平成14年度 岡本国際賞受賞
その他
・グレリンに関する研究で、最近2年間 (2000-2001年)における注目論文(Hot Paper)数が世界ランキング第1位の評価を受けた。(米国ISI社,
Citation Index)
・それに関する記事がNature Medicine 2002年5月号のBioprofileに紹介された。
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